「御惣寺淑子さんですよね?」
「そ、そうですけど」
「私は、湾港署の者です」
「えっ、警察の方?」
なんと、女は自分が警察官だと言った。
「警察の方が、どうしてこんな格好してるんですか?」
「それは……私もしたくてしてるんじゃないんですけど……」
場所が場所だけに、淑子を直近からマークするためは、
このような扮装をする必要がある。そういう理由らしい。
「ああ、そうなんですか。警察の方も大変なんですね」
「でしたら、話が早いですね。
あの……犯人から電話がありまして……。
何か、2人でからめって言われたんですけど」
「今携帯で話してらしたのがそうですか?
犯人から携帯に連絡が」
「ですから……からまないといけないんです」
「からむって何ですか?」
「私もよくわからないんですけど……」
事情が飲みこめていない者同士が、
周囲を見回しながらひそひそ話をしている。
「まさか、ああいいことをするわけじゃないですよね?」
「えっ? ああ……」
淑子の左手、5mほど離れた位置で、
女2人のコスプレイヤーがカメラに囲まれている。
その2人のコスプレイヤーは、
カメラの前で抱き合ったり、キスをし合ったりしている。
「ここはああいうことをする場所なんですね」